脂肪肝の治しかた


肝臓を先に攻めるのは危険です。
合谷穴・足三里・陽陵泉などで、肝臓を落ち着かせましょう。
肝臓が落ち着いたら、一番悪い所に、瞬間鍼をします。
足の厥陰経・肝経や足の少陽経・胆経に気を引き、必要なら肝兪・胆兪を使います。


脂肪肝は最も頻度の高い肝疾患と言われています。
鍼灸院で遭遇する確率も高く、よく「健康診断で脂肪肝だと言われた」と言って、患者さんが来院されます。
こういう症状をキッチリ治すことで、患者さんの信頼を勝ち取りましょう。

脂肪肝は治療せずにほっておくと、肝硬変に進みますので、キッチリ治しておくのが良いでしょう。
また、肝臓は「沈黙の臓器」と言われます。
症状が出て来るころには相当病気は進んでいますし、症状がおさまっても、「症状がおさまっているだけ」で治ったわけではありませんので、患者さんには定期的に鍼灸院に通ってもらえるようにすすめましょう。

とか言いながら、症状が鍼灸で治まったら、来なくなりますけどね・・・。

脂肪肝は、 肥満、糖尿病、高血圧とも関係が深く、動脈硬化の危険因子とも考えられています。
これらの症状や病名も頭の片隅に置きながら、治療することも大切です。
これらの症状の治療法は、他のページを見てもらうとして、ここでは、脂肪肝にしぼって、治療法を解説します。


まず、臓器である肝臓のある部分、右の季肋部を攻めたいところですが、いきなり「烈火のごとく暴れている肝臓」を攻めるのは、おすすめしません。
手や足に鍼をして、肝臓を落ち着かせることを先に行います。

手はどの経絡を使ってもかまいません。
臨床的には、「万能ツボ」と言われている合谷穴を使う事が多いですが、ツボにあまり意味はありません。
とりあえず、肝臓を落ち着かせることが大切です。
足もどの経絡を使ってもかまいません。
臨床的には、足三里穴や陽陵泉穴を使いますが、あまり意味はありません。
とりあえず、肝臓を落ち着かせることが大切です。

鍼をして、しばらくたつと、ガンガンに暴れていた肝臓が、だいぶん落ち着いてきます。
肝臓の「熱」が下がり、ビリビリと感じていた「邪」も少し落ち着いてきます。
そうすると、肝臓のある部分が全体が全面的に「邪熱」を発していたものが、本当に悪い所だけ、「邪熱」が残っている状態になります。

ここで、はじめて、肝臓にアタックします。

鍼灸の腕に自信がある方は、初めから肝臓を攻めてもかまいませんが、我々のような凡夫のやからは、肝臓を攻める前にワンクッションおきましょう。

さて、肝臓への刺鍼ですが、瞬間鍼が良いでしょう。
瞬間鍼とは「瞬間的に鍼を入れ、瞬間的に鍼を抜き去る技法」です。
鍼を鍼管に入れ、鍼の頭をかるく叩き、チョンチョンと切皮します。つぎに、鍼管をのぞき、一瞬で鍼を深刺し、1秒程度鍼をとどめたのち、鍼を一気に抜きさります。もちろん、鍼口は閉じません。

この刺法は、患者さんにもかなりの衝撃が来ますので、できれば、一発てズバッと決めたいものです。

つぎに足の経絡に鍼をします。
足のツボから、肝臓付近にある「悪いモノ」を引っ張るような気持ちで鍼をすると良いでしょう。
東洋医学独特の概念である「気」を引っ張るつもりで、手技を行います。

よく使うのはもちろん、足の厥陰経・肝経です。
足の厥陰経と臓器としての肝臓との関係は強く、経絡の中で一番関係が深いのではないかと私は思っています。
また、足の厥陰経・肝経の裏の足の少陽経・胆経も肝臓・胆のうとの関係が強く、ぜひ使いたい経絡です。

足の厥陰経・肝経なら太衝穴。
足の少陽経・胆経なら陽陵泉穴、臨泣穴などをつかいます。

ツボはあくまでも目安ですので、反応のあるツボを選びましょう。
左右のツボを使ってもかまいませんが、肝臓のある右側に反応が出ることも多いので、右側を上にした側臥位で治療すると、治療しやすいでしょう。

これでだいぶん、肝臓の状態がよくなっているはずです。
もし、まだ治療効果が出せない場合や、さらなる追い打ちをかけたい場合などは、背中(腰部)の刺鍼も良いでしょう。
肝兪穴や胆兪穴あたりを探ってみて下さい。かならず、硬くこりかたまっている筋肉を触ることがありますので、その筋肉を緩めてあげれば、肝臓の状態もよくなります。