むちうち症(交通事故の後遺症)
ーデスクワークと心下のつかえが、吐き気に影響したむちうち症の症例ー
患者
U・Kさん。30代前半、男性。
主な症状(主訴)
むち打ち(頚椎捻挫)
症状(現病歴)
1ヶ月ほど前、車を運転中に信号待ちでいったん停止したところへ、後からあてられた。
整形外科にて、「頚椎捻挫(むちうち)」と診断され、頸の牽引(けんいん)治療と温熱療法(ホットパック)をする。
痛みは少ないものの、気分が悪く、仕事(デスクワーク)をしていると、吐き気をもよおす。
主な症状
肩のこり感(++)
前・後・側屈時痛(-)
頭痛(+)
悪阻(++)
嘔吐(-)。
東洋医学的 四診(所見)
脈診/特に異常なし。こういうのを、「平脈」というのか?
舌診/舌体は細長く、舌苔は白苔。裏面、ややオ血の兆候。
腹診/下の図参照。
心下が固く、脇肋部にそって「寒」あり。
左横腹部にスジバリ。
触診/手先が冷たく、特に小指側(左手>右手)が冷たい。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診、舌診、腹診ともに、これといっておかしなところは無い。
ただ、体格は肉付きもよくしっかりしているのに、「寒」をあらわす要素を多く感じた。
たとえば、舌体が細長い、舌苔は白苔、脇肋部にそって「寒」あり、手先が冷たい…。
とにかく、「吐き気」の原因は、心下部の硬いものなので、ここをゆるめてやるように治療する。
治療と経過
初診
治療は「法」に従う。
頸と頭のつけ根付近を、即刺即抜で、よく散じる(邪気を散じる)。
心下部の硬いものを、ゆるめてやるように治療する。
基本的には、①細い針で、横刺で、浅く差して置鍼か、
②3番針か2番鍼程度の普通の太さの針で、ずどんと効かせて、即刺即抜。
第二診 初診から3日後に来院。
「この前の治療で、ウソみたいに楽になりました!」と言って来室。
治療は「第一診」に同じ。
第三診 初診から一週間後に来院。
治療は「第一診」に同じ。
第四診 第三診から一週間後に来院。
治療は「第一診」に同じ。
第五診 第四診から一週間と一日後に来院。
治療は「第一診」に同じ。
第五診以降、来院しなくなったので、一応、「治癒」としてカルテを閉じた。
感想(考察)
この患者さんの場合、「それほど、強く当たられていない」と自身が言うものの、「むち打ち」が長引き、「吐き気」まで出てきました。
むち打ちが長引き、悪化した原因は、2つほど考えられます。
ひとつは、患者さんの仕事がデスクワークであったこと。
もうひとつは、患者さん自身の「寒」の体質によるものです。
ずっと椅子に座り、パソコンのディスプレーとキーボード、書類の間を行ったり来たり動かし、頸を酷使する仕事の場合、どうしても治りが悪くなります。
「小刻みに、長時間、同じ動作を」するということは、身体にとってはとても大きな負担です。
これは、肩こり症の方にも当てはまることです。
デスクワークの方は、キリが悪くても無理やり仕事を中断し、休憩時間を作り、体操をするなどした方がいいでしょう。
1時間仕事したら5~10分くらい、意識的に「サボる」ことがとても大切です。
U・Kさんの場合、患者さんの「寒」の体質も、「むち打ち」の症状がいつまでも取れない要因になったいたようです。
むち打ちから来る、「吐き気」の要因には、
①事故の時に、前後に振られた「脳」の反応。
②捻挫した首の部分で、何らかの原因で何かが、「神経」を圧迫したり、刺激している。
③患者の体質によるもの等が考えられます。
U・Kさんの場合は、③があてはまります。
もともとこの患者さんは、「寒」の性質があり、内蔵の機能低下を引きおこしやすくなっていたようです。
たまたまなのか、事故の作用かはわかりませんが、とにかく内臓が機能低下をおこし、胃や腸でさばき切れなくなった水分や食物が、「嘔吐」となって現れてきたわけです。
この患者さんの場合、俗に言うミゾオチ付近にあった硬いもの(腹壁の異常緊張)をとってやれば、自然と吐き気がおさまります。