足のむくみと、なぞの腹の塊(かたまり)
(足のむくみがとれると同時に、腹の塊が小さくなった症例)
患者/50歳代中頃、女性、小柄で太りぎみ。筋肉質ではなく、水太りの印象。
主な症状(主訴)/足のむくみ(L>R)と足のだるさ(L>R)。
症状(現病歴)/足がむくみ、だるさが尋常ではないので、近隣整形外科を受診。利水剤(西洋薬/薬の名前不明)と漢方薬(五苓散)を処方され、服薬し、だるさが少し減じたが、「もうひと押し何かをして、むくみを取りたい」と当院を受診。
その他の持病など(既往歴)/仕事は立ち仕事。その他、特筆すべき事項なし。
家族歴/特筆すべき事項なし。
東洋医学的 四診(所見)
脈診/脈はやや沈んでいて、「パワフル」というわけではないが、力はある。
舌診/舌体は、ボテッと膨らんでいて水っぽく、歯の跡が残っている。色は薄ピンクで悪くない。
苔が有るのかないのか分からないくらいの薄い白苔。
舌下静脈の怒張もあるが、「あぁ、あるだろうね」というレベル。
腹診/下腹部が冷えていている。
臍の下に塊(かたまり)をふれるが、なぜか熱感がない。
触診/足の陽明胃経上に熱感を感じる(L>R)。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診では、脈はやや沈で、「パワフル」というわけではないが、力はあるという事なで、体質的なモノをあらわしていると考えて良いでしょう。病がもっと奥まで攻めてきていて、熱の性質を帯びていたら、脈はもっとパワフルになっていたと考えられます。
舌診では、「水」を連想させるものばかりです。舌体がボテッと膨らんでいて水っぽい。歯の跡が残っている。舌下静脈の怒張もあり、年齢も年齢なので、更年期障害に関連した「オ血」も存在するでしょうが、暴れているわけではないので、「あぁ、あるだろうね」という印象を持った。
腹診では、下腹部が冷えていている感じがし、臍の下に塊(かたまり)をふれるが、熱感がない。
この塊、足のむくみを診てもらった整形外科で触診してもらったそうだが、「良く分からない、何の塊だろう?」と、医師も首をかしげていたという。
おそらく、触診で確認した、足の陽明胃経上に感じる熱感(L>R)と関係が有るのだろうが、東洋医学的にも良く分からない。
子宮筋腫の様な腹の張り方ではなく、皮膚の直下にテニスボール代の塊をふれるが、良く分からない。
西洋医学的な理解/「良く分からない」と医者も言うので、良く分からない。(笑)

治療と経過
初診/初診は某年4月上旬。
基本的な治療計画は、とりあえず足陽明胃経上の熱感を取り、下焦(下腹部)の冷えを温める。
お腹の「塊」の意味は分からないが、「熱を冷まし、冷えを温める」という基本の治療をする。
腹の塊に「熱が有り、痛む」ようなら、医療機関を受診し、何科になるか分からないが、精密検査をすすめるところだが、熱もなく、痛んでもないので、とりあえず治療をすすめる事とした。
「原因」や「病名」がよく分からなくても、治療をし、治癒に導けるのが、東洋医学、とくに鍼・灸の利点だと思う。
足の熱感には鍼治療を。お腹の冷えには、鍼治療に加えお灸の力も借りた。
治療直後(感想等)/治療直後は、若干足のむくみがとれ、足が細くなった印象を受けるが、目立った変化は無かった。
しかし、患者本人は、「細くなった」と喜んでいた。
第二診/初診の一週間後に来院。足の太さはあまり変わっている様には見えないが、「だいぶん、歩きやすくなりました」と言う。効果が有った様だ。
治療計画は「第一診」に同じ。
第三診/第二診の一週間後に来院。治療計画は「第一診」に同じ。
第四診/第三診の一週間後に来院。ふと気になって、あえて無視していた腹の塊を触ってみると、お腹の塊がソフトボール代から、ゴルフボール代の大きさになっており、硬さも減じていた。足の熱感も引き、「ずいぶん、歩きやすい」と言う。
治療計画は「第一診」に同じ。
第五診/第四診の一週間と一日後に来院。
治療計画は「第一診」に同じ。
この後、だいたい週一回~二週に一回のペースで治療をする。「連続して」という感じではないが、約一年ほど鍼と灸の治療を続けた。かなり症状が楽になったのであろう、来院しなくなったので、一応「治癒」としてカルテを閉じた。
感想(考察)
この患者さんの場合、足に熱感が有り、それを冷やそうと体中から水を集めてきたので、むくみが現れたものと考えられます。
鍼治療により、足の熱感がとれ、水を集めてくる必要が無くなってので、むくみが取れたのでしょう。
いくら、むくみとだるさがきついからと言って、利水剤や漢方薬でも証に合わない漢方薬をむやみに与えてはいけません。
しかし、この、お腹の塊はなんだったのでしょうか??
この症例は、開業間もない時期に体験した症例ですが、臨床を長く積んできた今でも、良く分からない反応の一つです。
足の熱感が取れると時を同じくして、腹の塊が小さくなり、硬さも和らいだのですから、それと何らかの関係が有ったとは思いますが、良く分かりません。
しかし、上でも書きましたが、「原因や病名がよく分からなくても、治療をし、治癒に導けるのが、東洋医学、とくに鍼・灸の利点」だと思います。
身体の不調を訴え、誰に診せても「何か良く分からない」、どこに行っても「原因が分からない」と言われた事が有る方は、一度、鍼灸院のドアをたたいてみてはいかがでしょうか?
良く分からない症状でも、楽になる可能性が有ります。