花粉症、総論

花粉症の総論
(アレルギータイプ/呼吸器系タイプ/複合タイプの花粉症)

花粉症の西洋医学的概念。

 いま、日本に住んでいる人の、約25%が「花粉症」だと言われているそうです。多いですよね。

 花粉症は、スギやヒノキなどの植物の「花粉」が原因(アレルゲン)となって、くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状を起こす病気です。

 スギやヒノキを筆頭に、約60種類の植物の花粉が花粉症を引き起こすとされているそうです。

 症状は、鼻の三大症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)だけでなく、目の症状(かゆみ、涙、充血など)を伴う場合が多く、その他にのどのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽい感じなどの症状が現れることがあります。

 多くは鼻・目・のど等の「不快な症状」を発しますが、時に重症化し、呼吸困難や目の激しい痛み等を訴えることもあり、とてもつらい症状を発する場合もあります。

花粉症の東洋医学的概念。

 湯液(とうえき/漢方薬)の世界では、「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」という漢方薬を使うことが多いので、小青竜湯の説明をしながら、花粉症のメカニズムについて考えます。

 上の図は「小青竜湯」という漢方薬の症状の模式図です。
 文字が見えにくく申し訳ありませんが、胸の中に「喘咳(ぜんがい)」と書いてあります。
 喘は「ぜーぜー」いう呼吸音。咳はもちろん「セキ」のこと。小青竜湯は、呼吸器の病に使われることの多い漢方薬だと理解できるでしょう。
 この呼吸器の症状を改善する効果は、もちろん「のど」「鼻」の症状にも効果があります。

 また図の胸の下、「心下(しんげ)」と書かれた部位(みぞおちの付近)に、「水気(すいき)」と書かれたものが見えます。
 スイキとは、もちろん「水気(みずけ)」のことです。
 腹にたまった余分な水分(水毒/すいどく)が、炎症の熱で揺さぶられ、様々な症状を引き起こします。
 滝のように流れる鼻水、止まらない涙、どんどんあふれ出る大量の痰(たん)…。
 西洋医学の項目で描いた「下痢」もそれに当たります。
 頭痛や発熱、悪風(おふう/悪寒のゆるいもの)、悪寒、乾嘔(かんおう/からえづきの事)をともなう人もいます。
 
 この図のように、①体質的にもともと体内に水気(「毒性の弱い水毒」と言って良いかもしれません)が有った。
 ②外から入ってきた外邪(がいじゃ/西洋医学的に言えば、細菌・ウイルス・アレルゲン・花粉等)によって、炎症が引き起こされる。→頭痛、発熱、呼吸器症状などの症状が出る。
 ③外邪は水気に入り込み、水気に揺さぶりをかける。→セキ、喘鳴(ぜいめい/ぜーぜー呼吸)、鼻水、涙などがあらわれる。

 これが花粉症の起きるメカニズムです。
 そしてこの模式図から、おおまかな治療の方向性が見えてきます。

 ①呼吸器系を目標に、手の太陰肺経・手の陽明大腸経を使う。
 ②臓器である肺の裏側に当たる背部(特に肩甲骨付近)の異常を感じ取り、正常な状態に導く。
 ③のど、鼻、目の炎症に目をつけ、熱をさばいておく。
 ④腹部の虚・寒を補い・温め、水気もさばいておく。
 ⑤そのほかの症状もケアしておく。(←症状が急性の場合は、①②③を優先し、④⑤は次回以降に回す)

 ※もちろん「花粉症」という病名が同じであっても、その人の体質や症状の出方によって、使う漢方薬が違って来ます。上の説明は、あくまでも「モデルケース」とお考えください。

 ※下記は、花粉症の時に小青竜湯以外でよく使われる漢方薬です。
   ・麻黄附子細辛湯
   ・桂枝加附子遊
   ・苓甘姜味辛夏仁湯
   ・桂枝加葛根湯

花粉症に対する、個人的な意見。

 花粉症について、上の項目で治療のだいたいの方向性は見えてきますが、私の個人的な意見も書いておきます。

 ●花粉症は、3つのタイプに分けられる。

 花粉症は以下の3つのタイプに分けられます。

 アレルギータイプ
 呼吸器系タイプ
 複合タイプ

 の、3つです。
 
 アレルギータイプの方は、まさにアレルギー性鼻炎です。吸い込んだ花粉を、身体が外敵と認識し、攻撃を開始し、過剰に反応するタイプです。
 このタイプの方は、目・鼻の症状が主で、重症化することがまれなような感じを受けます。いっけん重症化してるように見えて、治療後すぐに鍼灸の効果が出て、急速に症状が軽減するような感じを受けます。

 呼吸器系タイプの方は、花粉にはもちろん反応していますが、それはあくまでも「スイッチ(きっかけ)」であって、スイッチが入ってからは、主に呼吸器症状を主にします。激しい咳、ゼーゼーする苦しい呼吸などを主な症状にします。
 このタイプの方は、小児喘息の経験が有ったり、肺炎などの肺の病気や気管支炎などの呼吸器の病気を過去に経験した方が多いように感じます。
 このタイプの方の花粉症は、「花粉症治療」ではなく、「呼吸器の治療」を優先的に行うと、案外早く治ったりします。
 このタイプの方の花粉症に、いわゆる一般的な「花粉症治療」だけをやっていても、治りません。
 「花粉症=アレルギー」という思い込みが邪魔して、「花粉症=呼吸器」を見逃してしまうので、要注意です。
 少し意識をするだけで、少し視点を変えるでけで、今まで治らなかった病気が治ったり、治りにくかった頑固な症状が取れたりするものです。
 花粉症に限らず、鍼灸師の柔軟性は大切な要素の一つです。

 最後に、複合タイプの方の花粉症ですが、これは「やっかい」です。
 このタイプの方が来たら、「あちゃ~、どっから手をつけようか…」と、悩んでしまいます。
 もちろん、アレルギーと呼吸器系を両方意識して治療はしますが、治療の時間もかかり、患者さんの身体への負担も大きい…。
 患者さんは、「なんでも良いから、早く治して!」、「このつらい症状から、1分でも1秒でも良いから抜け出したい」と言われますので、こちらとしても、ギリギリのラインで攻めますが…。
 とにかく、患者さんの一番つらいと思われている症状を取ること、いま患者さんの身体が表している一番激しい症状を取ることを最優先にして、治療する以外にありません。
 症状が緩和し、つらい症状が治まったから、アレルギータイプへの治療、呼吸器系タイプへの治療に切り替えます。

「花粉点」=花粉症の治療点がある!

 花粉症の治療をしていると、花粉症を発症している人に共通する反応点があることに気づきます。
 反応点=「生きたツボ」であり、生きたツボはそのまま治療点になります。
 主に、アレルギータイプの方の反応点です。

 詳しくは、下の図を見てもらえれば一目瞭然ですが、どの教科書を見ても載っていないので、不思議です。
 誰も提唱されていないので、「私の発案」という事にしておきます。
 (笑)

花粉症治療を始める時期は??  
 
 よく患者さんから「花粉症の鍼灸治療は、いつごろから来たら良いですか?」と聞かれます。
 症状がすでに出ている方は、すぐに鍼灸院に駆け込んでください。(笑)

 しかし、まだ花粉症シーズンではなく、症状が出ていない時はどうすれば良いでしょうか?
 そんな時は、「花粉症の始まる2か月くらい前から徐々に通い始めるのが良いでしょう」とお答えしています。
 つまり、3月4月5月のピーク時は、週に1~2回程度。
 2月は、月に2回程度。
 1月は、1月中にあいさつがてら、1回程度通っておけば良いでしょう。

 シーズン前から通うメリットは、まず何よりも、

 ①劇症化しにくい。劇症化しても、治りが速い。
  もう、これに尽きるでしょう。明らかに劇症化しにくく、劇症化しても治りが早いです。
 ②その年の「生の情報」が受けられる。

 鍼灸院には、花粉症患者さんがたくさん来ますので、「今年は、発症が早い」とか、「2月なのに、目がごろゴロゴロする…」とか、患者さんから生の情報が得られます。それを参考に、鍼灸師と患者さんとで、一緒に対策が組めます。
 
 ぜひ、お近くに鍼灸院にご相談ください。