花粉症のシーズンは過ぎていたが、鍼がよく効いた症例。

花粉症のシーズンは過ぎていたが、鍼がよく効いた症例。

患者/40歳代中頃の男性。

主な症状/花粉症。

症状/
 2年前から花粉症の症状を現すようになる。
 主に、目と鼻のかゆみ。
 くしゃみ、鼻水、頭重などはあまり気にならない。

東洋医学的 四診

脈診/浮脈。寸口も感じるが、関上がビリビリするほど感じる。
舌診/舌体はやや赤黒い。苔は黄苔。
腹診/下の図を参照。
   上腹部は広い範囲で「寒」。
   下焦は「やや虚」。「冷えてる!」と言うほどではない。
触診/鼻(目じりのあたり)から頭頂部にかけて、「邪熱」を感じる。
   同じく、後頭部にも「邪熱」を感じる。
   目のくぼみが黒く、色が悪い。

概念的理解

 脈診では、身体の上部で「熱」の反応があることを示しています。また、胸のあたりにも、何かがありそうなことを強く感じさせる脈。

 舌診では、病が腹部まで達していることが解る(この患者の場合は「胸」)。

 腹診では、胸に手をあてると、ザワザワする感じを受ける。「ビリビリ」までは来ない。上腹部がなぜ「寒」なのは、おそらく「水毒」でしょう。しかし、「水毒」にしては、「寒」が強すぎるが…。痩せ形で、元気もなく、目もくぼんで色が悪かったので、その関係であろうか…。

 触診で感じたこの「邪熱」の場所が、最大の治療点になる。

治療と経過

初診/5月某日。
   手の陰経は、頭部の「邪熱」を引っ張るのに重要な治療点。十分配慮する。
   腹部の「寒」に対しても、ちゃんと補法しておかなくては、他の治療がしっかり効かない。
   肩・背中を広く散鍼。邪気を十分さばいておく。
   目じり、眉間、前頭部、頭頂部の邪気を十分散じる。
   後頭部、うなじ、肩も十分散じる。

 ※ 必要なら三稜針で血を出しても良いが、この患者さんには必要なかった。

治療直後
 治療直後、目と鼻のかゆみが「ましになった」との事。
 第2診の時に聞いた話では、目と鼻のかゆみが、治療前が「10」とすれば、治療直後が「5」。翌日が「7~8」。第2診の日が「5」くらいだと言う。

第二診/第1診の2日後に来院。
    治療は第1診に従う。

第三診/第2診の1週間後に来院。
    「今日は、目と鼻のかゆみは『2』くらい。ほとんど気にならない」と言う。
    治療は第1診に従う。

第四診以降は、通常の治療に切り替える。

感想

 この患者さんの初診は5月中旬で、花粉症のピークは過ぎていた時期でした。
 この症例を書いたのは、「花粉症は案外、簡単に治る」という事を知ってほしかったからです。
 もちろん、花粉症のピーク時に、このような劇的な効果をあげることは難しいです(1回の治療で劇的に治ってしまう場合もあるが…)。

 花粉症治療の「要(かなめ)」は、「花粉症のシーズンに入る前に、治療を受けておく事」ですが、シーズン前でも、シーズン中でも、シーズンの終わりかけでも、治療を受ければ受けるほど、効果はあります。

 この患者さんの場合は、呼吸器系に若干の影響が出ているものの、主な症状が「目と鼻のかゆみ」で、熱を持っている部位も目と鼻が主なので、アレルギータイプの花粉症だと言えると思います。