呼吸器タイプの花粉症の症例

呼吸器タイプの花粉症の症例

患者/30歳後半の男性。

主な症状(主訴)
  肩こり、鼻づまり、頭重感。

症状(現病歴)
  3日前に風邪をひき、初診時は風邪の症状もほぼおさまったが、肩こりがひどく、鼻づまり、頭が重い感じがする。
  肩こりは、いわゆる肩ではなく、後頚部、頚の付け根が一番こる。

その他の持病など(既往歴)
  3年前に「花粉症」を発症。

東洋医学的 四診(所見)

脈診/脈はやや浮いている印象。
   脈拍はそれほど早くない。
   パワフルな感じは無く、どちらかというと、弱い印象を受ける。

舌診/舌体は薄いピンク色。
   うっすらと白苔がある。

腹診/後頚部のコリがひどく、硬い。熱も持っている。
   胸の方に「邪熱」を感じるが、ビリビリという感じでは無い。
   どちらかというと、「熱がこもって、外に出てこられない」ような印象。

   下腹部(下焦)の虚はあるものの、そこまで軟弱ではない。
   やや冷えている印象を受けるが、「冷たい!」という感じでは無い。

触診/普段は感じないが、初診時は足先の冷えを感じる。

東洋医学的な概念的理解(診断)

 脈診では、風邪に入られているものの、症状はそれほど激しくはなく、やや風邪に体力を奪われている事が読み取れる。「風邪の終わり」によく感じられる脈状の特徴を多く表している。
 舌診では、やや消化器系に影響があるものの、それほどひどくはない印象。
 腹診では、風邪に入られ、身体が邪を外に追い出したもの、まだ残りが残っている印象。
 触診では、いつもは感じられない足先の冷えがあることから、体力を消耗している事がうかがえる。

治療と経過

初診/某年2月中旬。
 肩・後頚部のコリに対して、上天柱穴を中心に、コッテいるところへ刺鍼。
 手の太陰肺経からツボを選び、刺鍼(太淵穴など)。
 胸(肺部)から熱を取るように散鍼。

治療直後(感想等)/
 太淵穴に刺鍼した直後、「鼻が軽くなった」と言う。
 「腕の真ん中(上腕の中頃)から親指の付け根の方まで、ジリジリと『何か』を感じます」との事。
 →鍼刺激に対して、敏感なタイプ。

第二診/第一診の1週間後に来院。
 「風邪の症状はまったく取れ、花粉症の症状もまだ始まらない」と言う。
 治療は「第一診」に同じ。

 この後、3月4月は週一回のペースで治療。5月は2週に1回(月2回)の鍼灸の治療を続け、鼻と目のかゆみが若干出たものの、日常生活に支障が出るレベルではぜんぜんなく、普通の生活がおくれたと喜んでいた。

感想(考察)

 この患者さんの状態をどう理解するかと言うと、まず3日前くらいに風邪を発症しました、そのあと、風邪の症状は治まったものの、まだ鼻付近に残っていた「邪気」が「鼻」に入り込み、花粉症様の鼻づまりを起こしたものと考えられます。
 症状は軽いですが、呼吸器タイプの花粉症と言えるでしょう。
 「キツイ花粉症を発症する前の段階」と言った方が、良いかもしれません。

 これが、花粉症のシーズンど真ん中だったら、もっとひどい呼吸器症状を現していたでしょう。

 このタイプの花粉症は、目・鼻・のどをいくら触っていても、治りません。
 症状を緩和するために、目・鼻・のど付近に鍼をしたり、関係のあるツボを選んで鍼をしたりしますが、東洋医学・経絡の「手の太陰・肺経」を使って、西洋医学でいう「呼吸器系」を治さないと、本当の治癒にはなりません。