複合タイプの花粉症。重症化タイプの花粉症の症例。
患者/30歳代後半の女性。
主な症状(主訴)/花粉症。複合タイプ・重症化タイプ。
症状(現病歴)/
毎年、花粉症に悩まされている。今年もシーズンに突入する前に治療に来たかったが、仕事が忙しく、来る機会を失っていた。
昨夜、喘息のような呼吸困難を起こし、呼吸器がゼロゼロいって、寝られなかった。
寝ようとすると、咳が出て、座る。座っていると落ち着き、また寝ようとすると、咳をするの繰り返しで、一晩中寝られなかった。
頭にクッションをたくさん置いて、半座り、半寝る体制で一晩過ごす。
朝一で花粉症専門のクリニックに行き、その足で当院を来院。
その他の持病など(既往歴)
4~5歳ころに、小児喘息。
8~9歳ころに、アトピー性皮膚炎。軽度。ステロイド剤は不使用。
家族歴/お父さんが呼吸器が弱く、良く風邪をひくらしい。(小児喘息を持っていたかどうかは、不明)
東洋医学的 四診(所見)
脈診/脈は、浮・数。ぴょんぴょんと飛び跳ねるような脈。
舌診/全体的に明るい色の舌をしている。舌尖は赤い。
腹診/胸の中のザワザワした感じが顕著。
触診/頭部、頸部、肩付近まで熱感。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診では、「熱」「風邪症状」をあらわしている。
舌診では、「熱」をあらわしている。
腹診では、「胸の中のザワザワ感」だが、のど・気管・気管支・肺の下部あたりまで「邪熱」が充満している感じ。咳の症状は、クリニックでもらったスプレーが効いているのか、今は出てこないが、肺の中で「何か」が「いつでもセキ、出したんぞ! 覚えてろ!」と言っているような気がする。
西洋医学的な理解/
花粉症。
念のための医師に「この後鍼灸院に行っても良いか?」と聞くと、「どうぞ」と言われた。
「花粉症の漢方薬をもらったら、(西洋薬との)飲み合わせとかあるので、相談してね」と言われたらしい。
なんて、東洋医学に理解のある医師だ!!
治療と経過
初診/某年3月中旬。
手の太陰肺経を中心に治療を組み立てる。尺沢穴や太淵穴などを選択。
足の陽明胃経をさぐるが、反応が無かったので、触らない。
背中を向てもらうと、肺兪穴の若干ななめ下あたり(膏盲穴くらい)を中心に硬く盛り上がっている筋肉があるので、刺絡をする。
治療直後(感想等)/
刺絡治療直後から、「息を吸うのが楽になりました」という。
第二診/初診の3日後に来院。
「初診の直後から呼吸が楽になり、睡眠もとれるようになりました」と言う。
現在は、思い出したように咳が出るときがあり、じゃっかんの頭重感がある程度。
治療は「第一診」に同じ。
第三診/初診の1週間後に来院。
背中のコリがなくなったので、刺絡治療は中止。そのほかの治療は、「第一診」に同じ。
第四診/初診の2週間後に来院。治療は「第3診」に同じ。
第五診/初診の3週間後に来院。治療は「第3診」に同じ。
第六診以降は、治療の主軸を「肩こり」に移行する。
感想(考察)
この患者さんの症例では、劇的に症状が改善されていますが、複合的花粉症、重症化花粉症では、こんなに速く治ることは珍しいので、お気を付けください。
シーズンに突入して、重症化したタイプの花粉症の「強い症状」、「激しい症状」は比較的早期に引きますが、それ以外の症状は、ダラダラと長引くものです。
やはり、シーズンに突入する前から、治療を開始したいものです。