食事がのどを通らない症状 嚥下困難が早期に改善された症例

食事がのどを通らない症状。灸治療→鍼灸治療→マッサージ治療
  (嚥下困難が早期に改善された症例)

患者/88才。男性。

主な症状/食事がのどを通らない。

症状/
 のどには異常が無い(内科にて診断)にもかかわらず、飲食が下らない。
 胃がんのため、十年ほど前に胃の3分の2を切除。

東洋医学的 四診

脈診/沈実。
舌診/舌体は赤く、黄色い苔が生えている。
腹診/
 やせていて肉がほとんど無い。
 腹部正中線上に、手術痕あり(胃がん切除)。
 上腹部は、全体に筋張っていて硬い。
 下焦のみ、フニャフニャ。やや「寒」あり。
触診/特筆すべき事項無し。

治療と経過

初診(某年3月16日)
 患者さんがお灸を希望されたので、灸治療。
 毎回、症状によって灸点は変えているが、主なものは、天枢穴、気海穴、足三里穴、三陰交穴など。
 「のどに異常はない」との診察と、私がのど付近を触っても、熱感も違和感も感じられなかったので、あえてのどは無視して、胃を3分の2切除した胃と食欲を出させる治療をメインに治療を組み立てる。

第二診(3月20日)
 灸点は初診時に同じ。とくに変化は無い。

第三診(4月14日)
 調子を崩されたので、1ヶ月ほど来院が遠のいた。
 灸点は第一診に同じ。

第四診(4月21日)
 ご家族の希望もあり、往診に切り替える(実費の往診)。
 鍼治療も開始。

第五診(4月24日)
 「灸を主、鍼を従」にして治療。灸点を増やす(胃の四つ灸など)。
 「徐々に食べられるようになってきた」とご婦人が話される。

第六診(5月1日)
 腹部の胃の四つ灸、多壮灸に切り替える。

第七診(5月8日)
 第六診直後のから、「普通に食べられるようになった」とご婦人が喜ばれていた。
 「普通に食べられる」と言っても、胃を3分の2切除しているので、量はかぎられるが、それでも患者さん本人も、流動食などではなく、細かく刻んだものではあっても、「自分の口で食べられることは良いね~」と喜ばれていた。

第八診(5月15日)
 「マッサージ」の同意書を医師からもらったので、マッサージ治療に切り替える。
 歩行が困難になった脚部と痛みに悩んでいた腰部のマッサージを施術。
 胃のツボ(足三里穴など)を指圧すると、とても喜んでいた。

 この後、週一回のペースで往診をする。
 約1年間通ったが、体調を崩され、入院。
 退院直後、お迎えが来たので、旅立たれた。

感想

 この患者さんは、かなり弱っておられ、足もふらふらで、なかなか治療院に来れませんでした。
 こういう方の場合、灸治療が良い場合が多いです。
 この患者さんも、お灸が良く効いた例と言えます。

 この患者さんの「主訴」は「嚥下困難」でしたが、食道には何の問題もありませんでした。
 「主訴」に引っ張られて、ノドばかり治療していても治りません。
 胃の治療や、食欲を増進させる治療をメインにしたことが良かったのだと思います。

 マッサージの同意書しか取れませんでしたので、マッサージ治療に切り替えましたが、たまに「サービスやで」」と1~2ヵ所お灸をしてあげると、喜んでいました。