片頭痛が主訴だったが、けっきょくは生理関連の諸症状だった症例。
患者/30歳代中頃、女性。
主な症状(主訴)/片頭痛。
症状(現病歴)/
仕事が立て込んだり、会社で上手く行かないことが続くと、片頭痛が出て来る。
きまって右側のこめかみからひどい時は右の頭全体に、脈拍と同じリズムで、頭痛がおきる。
ひどくなると、悪心、嘔吐を伴うが、それはまれで、ほとんど起きない。
光や音に過敏になり、うずくまって寝ているしかなくなる。
毎月ではないが、生理になったとき、2日目にも片頭痛がおきる。(←第3診時の話)
その他の持病など(既往歴)/特になし。(←生理関連での婦人科受診は無し。第3診時の話)
家族歴/特になし。
東洋医学的四診
脈診/やや弱い印象を受けるが、そのほか特に異常は感じられない。
舌診/特筆すべきものなし。
腹診/下焦にやや「虚・寒」。
触診/右のこめかみから髪の生え際にかけて、やや「邪」と「熱」を感じる。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診では、「やや弱い印象」を受けるが、長身だが細身の体格をあらわしているのだろうと理解した。
腹診で、下焦にやや「虚・寒」を感じたが、「よく足が冷える」と言っていたので、そのためかもしれない。十分温めることにした。
触診では、右の頭部(こめかみ~髪の生え際)に、やや「邪」と「熱」を感じるが、それ程きつくも無かったので、頭部への治療は軽めが良いかな~と、判断する。
治療と経過
第1診/某年11月1日
来院理由は「片頭痛」だが、頭部のそれほどひどい「邪」「熱」を感じなかったので、全身を調節するような鍼をして、片頭痛の症状が出てきたら、あらためて対応しようと方針を決めて、治療を開始。
手の陰経・陽経の経絡は軽くさばく程度。
下焦を十分温める。
片頭痛の場合、同側の足の三里穴が反応していることが多いが、右の三里穴も左の三里穴も、反応してなかったので、「気休め程度」に右三里穴に置鍼をする。
それよりも、右の鼠径部が「熱」を持っているように感じる(←子宮関連の病の時に、よく反応が良く出る)が、「初診」だし、主訴が「片頭痛」なので、詳しく聞くのをひかえる。
治療直後(感想等)
「頭痛は良く分からないが、身体全体が軽くなったような気がする」と言って喜んでいた。
第2診/第1診の1週間後に来院。
「頭痛に関しては良く分からないが、身体が軽くなったので、治療して欲しい」と来院。
治療は第1診に順ずる。
第3診/第2診の1週間後に来院。
「生理3日目」と言う。今回は、「生理が来ても片頭痛がおきなかった」という。
鼠径部の「熱」が顕著なので、詳しく話を聞くと、「毎月ではないが、生理になったとき、2日目にも片頭痛がおきる」と言う。
治療を全身を整える鍼から、生理等婦人科疾患に対応する鍼に変更する。
足三里・三陰交穴は絶対外せない。
第4診/第3診の1週間後に来院。
治療は第3診に順ずる。
第7診/第3診の1か月後に来院。
「どうも明日あたりが生理なので、それに備えたい」という。
治療は第3診に順ずる。
第8診/第7診の1週間後に来院。
「片頭痛が無かったのはもちろん、こんなに楽な生理は、生まれてから初めて!」と喜んでいた。
治療は第3診に順ずる。
感想(考察)
この患者さんの場合、「仕事が立て込んだり、会社で上手く行かないことが続くと、片頭痛が出て来る」と初診時に言っていたので、まずは「ストレス性の片頭痛」を疑いました。
しかし、背中のいわゆる胃の裏やその他ストレスに関係するツボがの反応が薄かったので、「まったくストレスがない訳ではないが、片頭痛の原因ではないだろう」とストレスを除外して治療を始めました。
細身の長身で、冷えやすいと言っていたので、全身を整え、温める治療は、間違っていなかったと思います。
第3診時に、「生理3日目」に鼠径部の「熱」が顕著だったので、婦人科疾患とまでは言えないが、子宮関係が片頭痛の原因だろうと理解し、治療をすすめると、良い結果が出ました。
このように、たった1回の治療で著効が出る場合もあれば、患者さん身体の事を色々聞きながら、2人3脚で治療をすすめていく場合もあります。
二人三脚ですすめていく方が多いですかね~。