夜間の咳症状が改善された症例

小児鍼症例②  夜間の咳症状が改善された症例

患者/3才7か月・男児

主な症状(主訴)/咳(特に夜間)。

症状(現病歴)
 咳こみ、咳がとまらなくなって吐く。
 1週間前に病院にて、気管支を拡張するシールと漢方薬(薬方名不明)をもらうがあまり変化が無い。

その他/
 ・手術や長期入院などされましたか? いいえ
 ・生まれたときの体重 2830g
 ・現在体重 15.5㎏
 ・ご飯は? よく食べる。
 ・便は? 普通。
 ・睡眠時間 11時~9時。
 ・昼寝は? しない。
 ・分娩 普通分娩。
 ・食物アレルギー 無し

東洋医学的 四診(所見) 
 
 指を診ると(小児の場合は人差し指で、大人の脈状診と同じことをする)、全体的に赤く・熱く、動悸もある。
 舌体は細く、苔は白苔。舌先の発赤は無い。
 腹部全体に発疹。
 下腹部は「寒」ではないがやや冷たい。「虚」というほどでもないが下腹部の抵抗感はない。
 背部の皮膚はザラザラした印象。全体的に皮膚は軟らかく(ヤワラカイといっても、柔軟ではなく、軟弱の方)、ところどころ湿疹があるので、アトピー性皮膚炎も疑われる。「喘息が治るとアトピー性皮膚炎に、アトピーが治ると喘息に」を繰り返すタイプかもしれない。
 「下の子ども(二男)が生後10カ月で、手がかかる」と言う。それも影響しているのではないか。

治療方針
 
 脈状と舌診、腹診の状況が、湯液でいうところの太陽病と陽明病の両方をあらわしている。
 もともと消化器系が強くないところに邪に入られ、咳・嘔吐などの症状をあらわしていると理解し、治療をする(下図参照)。

治療と経過

初診(某年1月31日)
 咳・嘔吐も考慮しつつだが、「消化器系が強くない」をメインの治療にすえる。
 胸の「熱」を軽く・素早くはらい、足の陽明胃経のラインを治療することをメインに考える。

第二診(2月1日)
 昨晩、咳を2、3度することはあったが、セキこむことが無くなった。
 ちょっと「カゼ」のような症状が出てきた(頭部・額部に邪熱)。
 下腹部の「虚」は力強くなる。背部のざらつき感がマシに。
 治療は「第一診」に加え、「カゼ」の治療も同時におこなう。

第三診(2月3日)
 微熱と鼻が出てきた。咳・嘔吐はしなくなった。
 治療は「第一診」に同じ。

感想(考察)

 上でも書きましたが、もともと消化器系が強くないところに邪に入られ、咳・嘔吐などの症状をあらわしていると理解し、治療を開始しました。
 治療により、入ってきた邪が出ていく過程で「カゼ」のような症状が出てきました。
 良い治療になっていると思われます。
 しかし、咳が治ったからか、「カゼ」の症状が強くなったからか、第3診以降、来られなくなりました。
 あと、1~2回、完全に「風邪症状」を治すまで、通ってほしかった…。