「かん虫」の症状が取れた症例。小児はり 鍼灸治療

小児鍼症例③ 「かん虫」の症状が取れた症例。

患者/0才7か月・女児。

主な症状(主訴)/かん虫。

症状(現病歴)/

 「すぐにキーキー、ギャーギャー言う」とお母さん。
 夜泣きもひどい。寝入りは良く、3時間ほどは良く眠るが、それ以降は30分から1時間の間隔で起きて泣く。
 抱いて授乳させると泣きやむ。おしゃぶりで寝ることもある。

その他/

 ・手術や長期入院などされましたか? いいえ。
 ・生まれたときの体重 2818g
 ・現在体重 7.7㎏
 ・ご飯は? 普通。
 ・便は? 普通。
 ・睡眠時間 夜10時から8時。
 ・昼寝は? する。
 ・分娩 普通分娩。
 ・食物アレルギー ない。

東洋医学的 四診(所見) 

 眉間(みけん)にくっきりとした青筋。
 肩こり強し。
 下腹部・下焦がやや「虚」の状態。
 足三里のスジ(前脛骨筋)が少し硬い印象を受ける。
 
治療方針

 全体的に体格の良い子どもで、生後7カ月なのに立とうとする。
 ハイハイを充分しないと背筋が弱くなるので、ハイハイの訓練を指示。
 肩・首のコリ、足三里のスジを重点的に治療する。

治療と経過

初診(某年3月8日)
 肩・首のコリ、足三里のスジを重点的に治療する。
 治療直後、肩のコリと足三里のスジがゆるんだ感じがしたので、良しとする。

第二診(3月10日)
 「前回の治療の後、30分~1時間の間隔で起きて泣いたのが、2時間おきになる。昨晩もギャーギャー泣いていたが、抱くとすぐに泣きやんだ。泣き声が小さくなったように感じた。また、昼間、一人にすると絶対に泣き叫び手がつけられないような状態になっていたが、昨日は一人で座って遊んでいた」と言う。
 旦那さんが帰宅時に、「眉間の青筋が薄くなっている!!」と驚いたそうだ。

 眉間(みけん)のくっきりとした青筋は少し薄くなる。肩こりはマシに、「やや硬い」程度まで減。下腹部のやや「虚」の状態は変わらず。足三里のスジは少しマシになったが、硬いのは、硬い。
 治療は「第一診」に同じ。

第三診(3月17日)
 治療は「第一診」に同じ。

第四診(3月20日)
 3月18~19日、実家の和歌山まで車で帰省。そのせいか、青筋も戻り、夜泣きももとに戻ったと言う。
 おそらく、車での長時間の移動や親せきの「だっこ攻撃」によって、症状がぶり返したのだろう。
 治療は「第一診」に同じ。

第五診(3月22日)
 睡眠は、2時間睡眠の後・覚醒、2時間睡眠・覚醒、1時間睡眠・覚醒、1時間睡眠・覚醒、30分睡眠・覚醒、30分睡眠・覚醒のリズム。「起きるのは起きるが、泣かなくなった!」と喜ばれていた。
 治療は「第一診」に同じ。

第六診(3月26日)
 第6診から第12診まで、週2回のペースで来院。

第十三診(4月21日)
 だいぶん症状が落ち着いてきたので、治療間隔を週1回に減らす。

 この後、だいたい週一回のペースで治療(調子の悪い時は週2回)をする。
 約3ヶ月ほど小児はりを続け、かなり症状が軽くなった頃から来院しなくなった。
 その後、思い出したように2~3回治療しては約半年間隔が開き、またカゼをひいて機嫌が悪くなると思い出したように来るということを繰り返す。
 
 しばらく来なくなったので心配していたが、近所の公園でばったり出会い、その後の様子を聞くと、「下の子ども(次女)ができると一時期赤ちゃん帰りをしたものの、それ以降は良いお姉ちゃんになり、よく手伝ってくれる。夜泣きも全然しない」との事だった。
 

感想(考察)

 眉間や額の青筋は、夜泣きやかん虫のときによく現れるサインで、不思議なことに、夜泣きやかん虫の症状が取れてくると、青筋が薄くなってきます。逆に、症状がぶり返してくると、青筋が濃くなってくる。
 この子の場合もそうであるが、体格も良く、元気で、よく食べる子どもでも、ちょっとしたバランスが崩れると、このような症状をあらわす。
 子どもは元気の塊なので、正常に発散してくれている間は良いのだが、何かのきっかけでエネルギーを発散しそこなうと、夜泣き・かん虫になって現れる。

 この子の初診は0歳7か月です。
 子どもは生後半年間は母親の免疫をもらって生まれてくるので病気が少ないが、この頃を過ぎたあたりから自己免疫に切り替わり、一気に病気が増えることになります。もともと胃腸が悪かったり、元気な子どもでもちょっとした寒暖の差やストレスを感じると、すぐに邪を受け(西洋医学的に言うとウイルスや細菌類の感染)、カゼをひいたり様々な症状を表わします。

 体内でちょっとしたバランスが崩れることにより、夜泣きやかん虫が現れます。