かん虫の症状が、徐々に良くなった症例

小児鍼症例⑦ かん虫の症状が、徐々に良くなった症例。

患者/1才5か月・女児
 
主な症状(主訴)/かん虫。

症状(現病歴)/
 思い通りに行かない時、たとえば空腹や眠たい時に、「キィーン!」と大声を出す。
 1歳ごろから夜泣きをする。
 いつもは耐えられるレベルだが、ここ最近耐えられないレベルになったので来院。

その他
 ・手術や長期入院などされましたか? いいえ
 ・生まれたときの体重 2750g
 ・現在体重 10㎏
 ・ご飯は? 普通
 ・便は? 普通
 ・睡眠時間 無記入
 ・昼寝は? 無記入
 ・分娩 普通便便
 ・食物アレルギー 無記入

東洋医学的 四診(所見) 
 季肋下にボーっとした熱感を感じる。なぜ~???
 肩コリ(+)、足三里穴のスジバリ(+)。
 その他・頭部、項部などに熱感なし。 

治療方針
 肩のコリ、足の前脛骨筋部を中心とした部位、季肋下のボーっとした熱感部も「さばく」様な感じで小児はりを行う。
 季肋下のボーっとした熱感の理由は分からないが、治療を通してわかることを期待し、治療をする。

治療と経過

初診(某年8月24日)
 治療は「治療方針」に従う。

第二診(8月27日)
 季肋下のボーっとした熱感が少しだけ減少。
 肩コリ、足三里穴のスジバリは不変。
 後頭部に少し熱が出てきた。汗はかいていない。
 治療は「治療方針」に従う。

第三診(8月31日)
 特に変化なし。治療を続ける。

第四診(9月7日)
 特に変化なし。

第五診(9月21日)
 少し間隔が開いたが、悪化も改善もしてない。
 若干、季肋下のボーっとした熱感が減少している。理由は不明。

第六診(9月28日)
 季肋下のボーっとした熱感はさらに範囲が減少しているが、存在することは存在する。
 肩コリ、足三里穴のスジバリは、初診時にくらべればマシになっているが、あることはある。
 「季肋下のボーっとした熱感」にばかり気を取られていて、確認するのを忘れていたが、主訴の「キィーン!と大声を出す」の症状が、「気にならなくなった」と言う。
 子どもの声の質が減じたのか、お母さんが慣れたのか知らないが、主訴は無くなった。

 第7診以降は、体調を崩し、調子が悪くなったら夜泣き・かん虫が出るので、「夜泣き・かん虫が出たら来る、治まったら来なくなる」を繰り返す。

感想(考察)
 この患者さんは、1歳になった頃から夜泣きが始まったといいます。
 ちょうどそのころ保育所に入所し、断乳し、離乳食を開始したといいます。
 「どれが悪い」という訳ではないですが、これらが短期間に集中したのはまずいですね。

 この患者さんで特筆すべきは、季肋部のボーっとした熱感があること。
 湯液でいうと少陽病、柴胡証になる。
 こういう症状を現す子どもも珍しい。
 深酒したわけでも、暴飲暴食したわけでもないのに…。(笑)

 結局、季肋下のボーっとした熱感の理由は分かりませんでしたが、主訴が取れたので良しとします。
 原因がわからなくても、治療するのが東洋医学ですし、治ってしまうので東洋医学です。
 肩こりも足三里穴の附近のスジバリも季肋下のボーっとした熱感と連動しているようで、普通、肩こりや足三里穴の附近のスジバリは2~3回の治療でとれてしまうことが多いが、この患者さんの場合は、第6診を超えたころようやく、少し緩みだしました。

 確実に症状は良くなっていましたが、お母さんの顔に「不安の表情」を読み取ったので、「他の子どもと比べ、治りが悪いから、気長にきっちり通ってね」と言いましたが、なかなか真面目に通ってくれませんでした。
 ま~、それでも、「調子が悪くなると連れてくる」のですから、良しとしましょう。