ひざの痛み
足を引きずるようにして来院した患者さん、急速に改善した症例。
患者/70代後半の女性。
主な症状/左ひざの痛み。
症状/
いつも左のひざが痛い患者さん。
いつもはカイロを張っていると痛みがましになっていたが、今日は痛みがまったく取れない。
足を引きずるようにして来院。
東洋医学的 四診(所見)
脈診/数脈。左の寸口のみ浮いている。残りは沈み気味、とくに右の尺口はおもいっきり沈んでいる。
脈管は力がなく、押さえるとつぶれる。ぐじゅぐじゅっとした感じ。
舌診/舌苔が舌の横にへばりついている。色は黄苔。
舌の裏にオ血を示す、舌下静脈の怒張あり。
腹診/腹診をするが、肌の色が悪いところが見受けられる以外、これといった症状はなった。
それが、鍼を一鍼下した瞬間、色々な症状が噴き出してきた。
詳しくは、後述する。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診では、数脈で浮いている部分もあるので、「熱」や「炎症」などが湯液でいう「表」の部分にありそうかな~っと思ってしまいますが、沈脈もあり、脈に力もないので、病が奥の方にあって元気がない(衰弱)のかな~とも思われます。ひとことで言うと、「ぐちゃぐちゃ」です。
舌診では、病が奥の方にありそうな雰囲気です。
腹診では、これが困った事に、特に症状が読み取れません。
とりあえず、一鍼を下す事にしました。
治療と経過
初診/某年5月14日
この患者さん、腹症の変化がおもしろかったので治療の経過とともに書いてみます。
まず腹診時に、お腹をさぐってみまたが、下の上の図のように、「皮膚の色が悪いライン」が診られる以外は、これといって症状がなく、手に触れるものもなかった。
手をこまねいているわけにもいかないので、とりあえず、色の悪いところをねらって、左の横腹に鍼を下してみた。
すると、下の下の図のように、左季肋部からソケイ部に走るスジバリがあらわれた。
次に、スジバリを切るように鍼を下すと、臍の左側に、図のような塊が出現。
今度は塊に一鍼下してみる。
鍼を抜いたのち確認すると、塊は大きさが半減するものの、まだ存在を主張する。刺激が過剰になってもいけないのでこの時は、「塊は次回、治療する」こととして、腹部はそれで置いておいて、脚部の治療に移った。
最後には右下腹部に、ぽちゃぽちゃと「水毒」の音がする。
そのほか、脚部等の治療は法に従う。
第二診/5月28日
治療は「第一診」に同じ。
第三診/6月5日
治療は「第一診」に同じ。
第四診/6月14日
治療は「第一診」に同じ。
第五診/6月28日
初診時の図と比べてもらえば分かりやすいと思うが、かなり腹の状態がよくなっている。
悪かった皮膚の色も良くなり、きつく強固なスジバリは、やや残るものの軽くなった。
塊のあったところは、圧痛はあるものの「手に塊を触れない」程度に改善され、ポチャポチャ水の音がしていた右下腹部は、「触られると気持ちの悪い」状態にまで改善した。
第六診/7月12日
第七診/7月30日
第八診/8月9日
第九診/8月22
「鍼のおかげで、お盆中、痛まずにすみました」との事。
どなたの初盆やったか記憶が定かでないが、おそらく旦那さんの初盆ではなかったか…?
第十診/8月31日
第十一診/9月1日
第十二診/9月3日
第十三診/11月27日
約二ヶ月ぶりに来院。「ちょっと調子悪くなった」とのこと。
治療は法に従う。
第十三診以降、来なくなったので、一応「治癒」とみなして、カルテを閉じた。
感想
この患者さんは、腹症が一鍼ごとに変わるので、驚いた。
鍼により、今まで張っていたお腹の皮や筋肉が柔らかくなって、下から悪いもの、硬いものが現れたと解釈するのが妥当でしょう。
今回の症例では、初診と第五診の腹症の図をつけた。
並べてみると、良くなって行っているのが分かってもらえるだろう。
「ひざ痛」なのに腹の話ばかりして恐縮だが、この方も、ひざばかり治療していても、治らない症例の人です。