急性腰痛(急性腰痛を「治してしまった」症例)


急性腰痛(急性腰痛を「治してしまった」症例)

患者

 O・Yさん。50代後半、男性。

主な症状(主訴)

 主訴は、腰のはげしい痛み。

症状(現病歴)

 仕事は水道の配管修理。
 「腰を曲げて無理な姿勢で作業することも多く、一昨日から違和感があったものの、仕事はできるので仕事をしていた」という。
 仕事中、急に腰のあたりで「ブチッ!」という音がして、急に痛みが出てきた。
 仕事を早めに切り上げ、家に帰って寝たが、朝起きると、腰が痛くて動かない。
 家族に両脇を抱えられての来院。

東洋医学的 四診(所見)

 痛みが強く、ゆっくり診察している時間など無いので、すぐに治療を開始。
 はっきりした原因がわからなくても、治療ができ、治癒に導けるのが、鍼灸の利点。

治療と経過

初診(某年 4月上旬)

 治療は「法」に従う。

 痛みのある腰部は、少ないツボで効果をあげなければ、余計に痛みを増すので注意が必要になる。
 下肢のツボ、とくに足首から下のツボから腰にある「邪気」を引けるかどうかで、治療効果が違ってくる。

治療直後(感想等)

 治療後、両脇を抱えられて来院して来たのに、帰るときは普通に一人で歩いて帰っていった。
 後日、「鍼治療を受ける前は、『鍼なんて効くもんか』と、まったくバカにしていたが、一発で痛みが取れたので、びっくりした」と、おっしゃっておられたと、患者さんの奥様から聞いた。

感想(考察)

 ここまでは、治療が「成功」した症例。
 この後がいけなかった…。

 私は、「痛みが取れただけで、椎間板はまだ外に出たままやと思うから、2~3日は、絶対安静。寝ていてください。4日目ごろからは仕事してもいいですが、徐々にならして行って下さい」と、何回も言いました。
 当院に来る前にレントゲンを撮った整形外科でも、「椎間板が出ているので、絶対安静」と、注意を受けていました。

 しかし、「痛みがなくなった」事を「治った」と勘違いし、この患者さんは、次の日から仕事に行ってしまいました…。
 あ~あ…。

 仕事上、無理な姿勢をしたため、けっきょく痛みがぶり返し、椎間板が神経を圧迫したため、おしっこが出なくなり、緊急入院、緊急手術となりました・・・。
 言われた通りに寝ていれば、3~4日したら、また元気に働けたのに…。
 この患者さんは、両足のしびれと排尿困難の後遺症が残りました。

 私はこれ以来、急性腰痛の患者さんは、どんなに「一発で痛みが取れる」とわかっていても、「一発で痛みをとらない」ことにしています。
 人間、痛みがなくなると、「治った」とかん違いするからです。



 「痛みがある」ことと、「治癒した」こととは、別のものです。

 「痛みが無くなった」から、「治った」わけではありません。