治療の基本姿勢

私の治療法。

 少々長いので、無理して読まなくても良いです。
 (笑)

 興味のある方は、ぜひお読み下さい。


 私の治療は、「病んだ身体をいじくりまわす」というような治療ではなく、「やまいの原因をとりのぞき、身体を根本から治療する」ことを目指しています。

 ですから、「痛む部分」だけではなく、腹部や背中、痛みのない手足にも鍼や灸で施術し、崩れた身体のバランスと崩れた心のバランスを、もとどおりに調えます。

 もちろん、「ここ痛いから、何とかしてくれ!」という所を治さないと、大阪では商売になりませんので、きっちり、「痛み」や「つらい所」は取りますが、「痛いところ」だけ触っていても、本当の治療にはなりません。

 「痛いところを取る鍼」と、「くずれた全身バランスをととのえる鍼」の両方をさせて頂いて始めて、「治療をした」と言えると思います。


 まず簡単に、「病(やまい)」の原因を説明します。人間の病は、身体に長い期間をかけて蓄積された、「毒(どく)」により発症します。そして、この「毒」から放出される、「邪気(じゃき)」に よって、身体の様々な場所に「痛み・だるさ・冷え」といった症状がひきおこされます。

 「毒」とは、「身体に好ましくない影響をあたえる実体」であり、

 「邪気」とは、「身体に好ましくない影響をあたえるはたらき」と言うこともできます。


 ・・・。

 いきなり、「毒」とか、「邪気」とか出てきて、面食らった方もおられるのではないでしょうか。(笑)

 この、「毒」という概念は主に、湯液(とうえき/漢方薬)の世界で使われる言葉です。古代中国では、薬のことを「毒薬」とも言いました。「毒をもって、毒を制する」という言葉もここから来ています。つまり、「毒」である薬で、身体の中の「毒」に揺さぶりをかけ、「毒」を下したり(下痢)、吐かせたりしたのです。

 お薬の「毒」は、身体によい作用をして、身体を良い方向に持っていく ありがたいものです。しかし、身体に蓄積される「毒」は、けっして良い方向には働きません。「毒」は、身体のためには、ためないほうが、良いのです。

 ちなみに、「楽(らく)になる草(くさ)」で、「薬(くすり)」です。漢字というものは、便利にできています。


 もうひとつ、何やらあやしげな言葉が出てきました。「邪気」です。これは主に、「はり・きゅう」の世界で使われる言葉です。最近は、東洋医学のことをテレビなどでも取り上げることが多くなってきましたので、「気(き)」という言葉を聞いたことがあると思います。

 「気」を、簡単に説明しますと、「身体の中をグルグル回っている、エネルギーのようなもの」と言えます。このグルグル回っている「気」が、正常に働いているうちは良いのです。栄養の源ですから。

 しかし、この「気」が、毒気にあてられると、「邪気」になります。そして、毒素を振りまきながら身体中をグルグル回ります。これでは、身体はたまったものではありません。毒素をふりまく気(=邪気)を抜いてやらなければなりません。「はり・きゅう」の出番です。


 さて、人間の病の根源が、「蓄積された毒」にあり、痛みの根本が、「毒から発生する邪気」にあるのならば、私の治療の目的は、以下のようになります。


 「邪気」をはらい、「毒」を下し、嵐のように荒れ狂う身体を、風のない穏やかな状態にすること。


 ご理解いただければ幸いです。


 「毒」は、多くの場合、胸の中やお腹に蓄積されます。蓄積されるものですから、基本的には動きません。動き出すと、とんでもないことになります。苦しみに、のた打ち回ることになります。

 またこの蓄積された「毒」は、蓄積場所に近い臓器に悪い影響を及ぼします。

 心臓に近ければ、心肥大、狭心症等・・・。

 肺臓ならば、肺がん、喘息等・・・。

 腎臓なら、腎炎、ネフローゼ等・・・。

 肝臓なら、肝がん、肝炎、肝硬変等・・・。

 胃に近ければ、胃がん、胃炎、胃潰瘍・・・。

 子宮に近ければ、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮がん等・・・。

 と、いった具合です。ありとあらゆる病気の原因は「毒」にあります。


 西洋医学が、個々の病気に注目し、細分化していくのと対照的に、東洋医学では、大きく人体そのものをとらえます。肝臓を治しながら、おしっこの出をよくしたり(腎の機能)、胃の炎症をおさえながら、血圧をととのえたり(心の機能)・・・。

 そんな事は、日常茶飯事です。もちろん、「内科・東洋医学」とか、「婦人科・東洋医学」、「整形外科的・東洋医学」と云ったものはありません。すべて、一本の針・一握りの艾(もぐさ)で治してしまうのが、東洋医学です。

 なぜそういった治療ができるのか? それは、個々の臓器の良し悪しに注目するのではなく、大きく人間=生命全体をとらえて、治療して行くからに他なりません。


 「毒」は長い時間をかけて蓄積されます。ですから、お医者さんのところに行き、「○○病ですね」と言われるころにはもう、すでに、病はかなり進行しているということです。

 それまでに治す。
 病(やまい)が病(やまい)になってしまう前に治す。

 つまり、「毒によって、臓器が侵されないうちに、治してしまう」のが、東洋医学の真骨頂(しんこっちょう)と言えます。「毒」が悪さをしないうちに、外に追い出してしまうわけです。

 しかし、実際は、「すでに侵されたあと」に、あわてて来院される方が大半ですが・・・。
 (笑)

 それでも、まだ間に合います。「あわてて」でも良いので、ご来院ください。
 (笑)


 さて、「毒」は、身体の中にとどまり、徐々に蓄積され、あまり動こうとはしませんが、「毒」から放出される「邪気」は、身体のどこでも好きなところに行きます。

 しかし、好きなところと言っても、でたらめな所に行くのではなく、やはり、好みがあります。「邪気」 は、「古傷(ふるきず)」や、身体の弱っているところなどを好みます。

 よく、「何もしていないのに、痛みだした」とか、「急に、苦しくなった」という話を聞きます。もちろん、西洋医学的にはなんら問題が発見できず、医者も患者も頭をかかえるばかりです。そんな患者さまを何人も診ましたが、そういう場合は、「邪気」が悪さをしている場合が多いようです。

 つまり、痛んでいる箇所にはなんら問題は無く、「毒」から発生した「邪気」が、好きかってに落ち着くところ(古傷)に入り込み、悪さをしているのですね。

 「仕事がたてこむと、むかし痛めた腰が痛む」、「冷えてくると、セキがとまらなくなる」、「お腹の調子が悪くなると、膝(ひざ)が痛んでくる」等のような話をよく耳にします。

 「仕事の疲れ」と「古傷」、「身体のひえ」と「セキ」、「腹部」と「膝」のように、一見何の関係もないように見えますが、本当は身体の奥底でつながっているのです。しかし、それがわからない。「痛む場所」と「悪い場所」が違うので、みんな頭を抱えるわけです。

 患者さまの中には、私の治療を受け、「肩こりなのに…、腰痛なのに…、なぜお腹も治療するのだろう?」と疑問をもたれる方も多くおられます。しかし、「身体の傷む部分と、身体の悪い部分は、違うところにある」ということがわかれば、納得していただけるのではないでしょうか。


 長々とくだらない説明をいたしました。すみません。

 実を言うと、理屈は抜きにして、「楽になるから鍼に来る」、「気持ちが良いから灸をする」という患者さんもたくさんおられます。

 それで良いんじゃないかと、最近は思っています。

 いかがお思いでしょうか?
 また、感想などお聞かせください♪


積極的治癒反応(瞑眩反応)について

 鍼や灸、漢方薬などの治療後に、体調の変化を訴えられる方がおられます。

 「少し気分が悪くなった」、「下痢をした」、「身体がだるくなった」などの症状です。

 しかしこれは、「瞑眩(めんげん)反応」というもので、副作用といった類(たぐい)のものではまったくなく、身体がよくなる前に、一時的に少し悪くなったように感じる反応です。この症状が治まれば、自然と身体が治療前より良くなっていることに、気づかれるはずです。


 次のような症状が、瞑眩反応です。

 「吐く」、
 「下痢をする」、
 「おしっこがたくさん出る」、
 「汗をいっぱいかく」

 と、いったものが代表的な反応です(汗・吐・下・和=発汗・嘔吐・下痢・小便)。


 また、次のような症状も、瞑眩反応です。

 「一時的に熱が上がる」、
 「一時的に痛みが増す」
 「生理の血の中に、レバーのような色をした血が混ざる」、
 「フキデモノが出る」、
 「痰がたくさんでる」、
 「鼻血がでる」、
 「一時的に検査結果が悪化する」

 と、その反応は多岐にわたります。


 また、うつ病等の精神疾患の患者さんなどでは、

 「悲しくもないのに、涙があふれ出す」
 
 という反応を示す方もおられます。


  しかしこれらは、「積極的に治癒に向かう反応」というものであり、なんら心配する必要の無いものです。


 具体的な瞑眩反応につきましては、下記の「『瞑眩』のページ」でも紹介しています。もし、興味がありましたら、ご覧ください。


(2013年11月、一部改訂)
(2017年04月、一部改訂)