慢性腰痛(比較的早期に治った腰痛の症例)
患者
K・Sさん。30代後半、男性。
主な症状(主訴)
主訴・腰痛。
症状(現病歴)
2ヶ月ほど前に急に腰が痛くなり、仕事ができなくなったので、近所の整形外科を受診。
医師から、「椎間板ヘルニア(L3‐4)」と診断される。
ホットパック(温熱治療)と腰椎牽引治療をつづけるが、激しい痛みはなくなったものの、重だるく、腰に力が入らない状態がつづいたので来院。
その他の持病など(既往歴)
特になし。
家族歴
特になし。
東洋医学的 四診(所見)
脈診/寸口の脈が浮。
舌診/ 特に異常なし。
腹診/下図参照。
下焦にきつい「虚」と「寒」の症状がある。
触診/若くてがっしりした体形なのに、足も冷たい。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診では、浮脈があるので、湯液でいう「表位」に熱がある事を示している。
舌診では、特に異常が見られなかった。病がまだ身体の奥におよんでいない事がわかる。
腹診では、とにかく、下焦の「虚」と「寒」が顕著。同時にこの「虚」と「寒」は、治療点になる。
ちなみに、「冷たい飲み物、好きですか?」と聞くと、「好きです。」との答え。
「そうでしょうね~」と言う私に、「腰痛と関係あるんですか?」とけげんな顔をして聞くので、「関係あるんですよ」と言って治療を開始。
治療と経過
初診(某年9月3日)
治療は「法」に従う。
とくに、「腰のコリ」と下焦の「虚」と「寒」を治療の中心にすえる。
第二診(9月10日)
治療は「第一診」に同じ。
第三診(9月17日) 治療は「第一診」に同じ。
第四診(9月24日) 治療は「第一診」に同じ。
第五診(10月1日) 治療は「第一診」に同じ。
第六診(10月8日)
「腰の痛みはないが、太ももの裏がつっぱる感じがする」というので、その部位も治療点に加える。
「肩もやっといて」と言うので、肩こりの鍼もプラス。
この頃になると、腰痛の「治療」というよりかは、「全身の調整」になる。
この後、きっちり「週一回」のペースで、約一年ほど鍼灸治療を続け、「仕事が、現場から事務に変わりそうだ」という言葉を残して、来院しなくなったので、一応、「治癒」としてカルテを閉じた。
奥さんの話によると、「あまり、『腰、腰!』と言わなくなった」との事。
感想(考察)
この患者さんは、福祉施設に勤務する介護士で、仕事の関係上、入浴の介助などもするため、「長時間」、「中腰」で、「力のいる」作業を続けるようです。
痛みが消えてからは、「きつい腰痛が再発するのを予防する」意味と、「健康維持」のために通っていました。
この患者さんの場合は、「入浴介助」といっても、一日中水浸しのコンクリートの上で作業しているわけではないので、それほど「腰痛」もしつこくなく、楽になってもらいましたが、これが、水浸し(=冷える)、コンクリートのむき出しの床(=冷える)、忙しくて汗をかく(=冷える)という条件のもとで働いている方の腰痛は、より難治の傾向にあります。
こういう「ひつこい」というか、「難治」の傾向にある腰痛は、鍼灸師の腕の見せ所です。