腰痛 (水の飲み過ぎによって引き起こされた腰痛の症例)


腰痛 (水の飲み過ぎによって引き起こされた腰痛の症例)

患者
 
 H・T様。35才。男性。

主な症状(主訴)

 腰痛。

症状(現病歴)

 二日前に、職場で事務机を持ち上げた際に痛めた。
 「動けないわけではないが、じっと立っているとつらい」と言う。

東洋医学的 四診(所見)

脈診/沈脈。。

舌診/舌に潤いはあるが、「あり過ぎている」という感じ。歯痕もあり。

腹診/下図参照。
   お腹全体が、ぽちゃぽちゃと水ぶくれのような印象を受ける。
   下焦は「寒」。
   「寒」の中心部に、圧痛。「虚」している痛みではない。「実」の痛み。

触診/足は両脚とも冷えている。

東洋医学的な概念的理解(診断)

 脈診では、病が身体の奥深くに存在している事を示している。
 舌診では、「水毒」の傾向を読み取れる。
 腹診では、まだ若いのに、ぽちゃぽちゃと水ぶくれの様相を呈している。更年期の「オ血体質」の婦人のお腹に似ている。男性だけどね…。

 下焦が、「虚・寒」ではなく、「虚・実」である事が気になる。

治療と経過

初診(某年 10月22日)

 治療は「法」に従う。
 この患者さんの治療で、一番難しいのが、下焦への刺鍼法でしょう。
 「寒」に対しては「あたためる」治療を、「実」に対しては「瀉」の治療をしなければなりません。
 温めつつ、邪気を抜く鍼です。ぜひ、試みられたし。

 あとは腰、足に鍼をして治療終了です。
 ちなみに足は、太谿穴(足少陰腎経)、崑崙穴(足太陽膀胱経)を使いました。

第二診(10月24日)

 治療は「第一診」に同じ。
 第一診時に、わりと強い刺激でも大丈夫な事が分かったので、特に腰部は刺激をきつくする。

第三診(10月29日)

 お腹の「寒」がいっこうに良くならない。腹部を重点的に、温める鍼をする。
 治療は「第一診」に同じ。

第四診(11月6日)

 「だいぶんまし」と言う。少し下焦の「寒」が緩む。
 ゆるんだ程度、まだ依然として「寒」ではある。
 治療は「第一診」に同じ。

第五診(11月13日)

 本日治療中に、「健康のため」と思いこみ、「お茶をむりやり飲んでいる」という話を聞かされる。
 「それは、健康にとっては逆効果。水分は、喉が渇いた時に飲めば良いので、むりやり飲まないように」と、指示をする。
 腎臓の機能も正常で、おしっこもたくさん出ているのに、「なぜ、水毒なのか?」という疑問が解ける。

 治療は「第一診」に同じ。

 第五診以降、急速に腰痛が改善され、この後、二回ほど治療したが、来院しなくなったので、一応、「治癒」としてカルテを閉じました。

感想(考察)

 この患者さんは、①お腹の「寒」が緩んだ事と、②むりやりお茶を飲むのをやめた事により、急速に症状の改善が見られました。

 「水の飲み過ぎによって引き起こされた腰痛の症例」と聞いて、「あっ、石部先生も『危ない世界』に行っちゃったな~(笑)」と思われた方がおられるかもしれませんが、大丈夫です。どこにも行っていません。私はここにいます。

 いつの時代にも、「○○健康法」というものがブームになります。
 古くは「紅茶キノコ」に始まり、「酢大豆」、「カスピ海ヨーグルト」、「リンゴ酢」などなど。
 枚挙にいとまがありません。
 その中で、西暦の二〇〇〇年ごろから流行したのが、「水飲み健康法」です。

 一日に2リットルもの水を飲みます。

 そりゃ、身体がおかしくなるのも当たり前です。
 日本という国は「高温多湿」で、我々は湿気を多く含んだ環境で生活しています。
 もともと大量に水をとる必要がありません。
 それをむりやりお茶をがぶがぶ飲めば、身体がおかしくなるのも当たり前です。

 この患者さんの病状を概念図にすると、こうです(下図)。


 ① 「水」などを過剰に摂取する。

 ② お腹に余分な水がたまり、「水毒」となる。

 ③ 水毒により冷やされ「寒」になるとともに、「実」してくる。

 ④ その影響が腰にくる(「腰痛」)。