腰痛と大腿のだるさが主訴の症例
患者
M・M様。80才台前半。女性。
主な症状(主訴)
主訴は腰痛。
「太もももだるい」と言う。
症状(現病歴)
腰痛は三十年来ずっと痛い。
大腿がだるい感じは、2ヶ月ほど前から。
その他の持病など(既往歴)
椎間板ヘルニア由来の坐骨神経痛あり。
ヘルニアは、腰椎の何番目か不明。
東洋医学的 四診(所見)
脈診/沈脈。脈管の力は弱い。
舌診/やや黄苔。
腹診/下図参照。
お腹は全体的にぽちゃぽちゃ。
心下から臍の上にいたる硬い感じ。
下焦の「寒」。左下腹部にいたる。
触診/ 下図参照。
だるい部分は図を参照。左>右。
だるい部分に、やや熱感あり。
それほど熱くは無い。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診、舌診では、病が身体の奥に存在することを示している。
腹診では、心下の硬い範囲が比較的広いものの、今回の「腰痛」とはあまり関係がない。
下焦の「寒」が左の下腹部にいたっている事と、足のだるい範囲が左の方が大きい事に注目。
治療と経過
初診(某年 1月8日)
治療は「法」に従う。
心下から臍の上にいたる硬い感じは、今回の腰痛とはさほど関係が無いので、流す程度。
下焦の「寒」、とくに左下腹部を重点的に治療する。
もちろん、腰痛が主訴なので、腰部、脚部も治療する。
第二診(1月15日)
「腰の痛みはだいぶんましだが、足のだるい感じが取れません」と言う。
下焦の「寒」はあまり変わっていない。
鼠径靭帯がやたらと硬い事に気づく。
先週は気づかなかった。
ただ単に、気づかなかったのか、新しく出てきたのか不明。
下焦の「寒」を重点的に治療。
鼠径靭帯への刺鍼を加えた以外は、治療は「第一診」に同じ。
第三診(1月23日)
「足のだるいのが少しましになった」と患者さん。
治療は「第一診」に同じ。
この後、だいたい週一回のペースで3回ほど治療しましたが、急に来院しなくなりました。
知り合いの方の話では、「よく知らんけど、入院したらしいよ」との事。
感想(考察)
この患者さんの場合は、「腰痛」と「大腿のだるさ」を分けて考える必要があります。
腰痛は、患者さんがおっしゃる通り、椎間板ヘルニアからの痛みでしょう。
しかし、大腿のだるさは、椎間板ヘルニア由来の坐骨神経痛のだるさではなく、鼠径靭帯部で動脈が圧迫されたことによる、血行不良によるものだと考えられます。
腰が曲がっているので、その影響もあります。
鼠径靭帯の下を通って、動脈(大腿動脈)が足(大腿、下腿)へ。足から静脈(大腿静脈)とリンパ管(大腿輪)が体幹へ流れて行きます。
ここが圧迫されると、大腿のしびれやだるさ、痛みがおこってきます。
患者さんにとっては、椎間板ヘルニアであろうが、坐骨神経痛であろうが、鼠径靭帯部で圧迫されたことによる血行不良であろうが、ぜ~んぶ、「腰が痛い」です。
我々の方で十分観察と診断をし、適切なアプローチをする必要があります。