タイトル瞑眩の症例 (肩を刺絡した後、瞑眩が出た症例)
患者
Y・Y様。72才。女性。
主な症状
きつい肩コリ。
その他、右ひざ痛(膝関節症)。
症状
「肩が凝り過ぎて、夜も寝られない」という。
東洋医学的 四診
脈診/脈管に力が無く、グジュグジュと脈うつ感じ。
舌診/舌体は色が薄い。湿っている。苔はない。
腹診/下図を参照。
上腹部に「寒」。
下腹部は水っぽくぽちゃぽちゃしている。冷たいが、「寒」までは感じない。
Y・Yさんは背も高く痩せているので、太っている方の水っぽさとは違う水っぽさを呈している。
触診/ひざ痛に関しては、右の「膝眼穴」付近に、若干の「邪熱」。
手足は冷たい。
概念的理解
脈診では、「衰え」を感じる。
舌診では、やはり「陽」より「陰」を感じる。
腹診でも、冷え、衰えを感じる。
その表裏(おなかの寒↔背中の熱)の関係で、肩に異常なコリを感じるいるのではないだろうかと予想される。
治療と経過
初診(某年 5月9日)
治療は「法」に従う。
手の陰経、陽経さばく。
腹部、心下の「寒」に対し、温める。
下焦の手術痕の引きつりを緩める。 →直後に、「グルグル」とお腹が鳴る。
右ひざ痛に対し、曲泉、三陰交、足三里、陽陵泉、豊隆。
肩の痛みに対して、肩周辺の要穴を、早く刺し早く抜き、邪気を散じる。(即刺即抜)
→ 「肩のコリ感は少しましになったが、まだつらい」と言うので、
肩に刺絡をする(下図・参照)。
左の刺絡は二~三滴ほど血が出て止まったが、右肩は、血がドクドク出て止まらない。
血をぬぐうために用意したガーゼが二枚、真っ赤になるほど血が出た。
治療直後
第二診の時の話では、
「家に帰って、ご飯を食べたら気分が悪くなった(12時頃)。
その後、布団に横になり寝ていたが、3時ごろ昼に食べたものを全部吐いた。
吐いたら気分が悪いのは無くなった」と言う。
「肩のコリは、(血が大量に出た)右は楽になったが、(血があまり出なかった)左が痛い」と言う。
感想
そもそも、どんな患者さんであろうが、どんな症状であろうが、病が楽になったり、治って行く過程で、必ず「メンゲン」がおこります。
「瞑眩」の多くは、患者さん自身も、鍼灸師も気づかないまま、良く分からずに静かにおこって、静かに治癒に導かれていきます。
しかし中には、その瞑眩が、「これは病気が治って行く過程だ!」という事が明確に患者さんにも理解できるような形で起こる事もあります。
また、その病が「治る事」の象徴的な形で、「瞑眩」が起こる事もあります。
そのような象徴的な症例に出会いましたので、今回報告することにいたしました。
この患者さんが治療後に気分が悪くなった原因を、「否定的」に考えるのなら、
① 刺絡の刺激がきつすぎて、一種のショック状態となり、気分が悪くなり、吐いた。
② 腹部の「水毒」を動かし過ぎたので、その水が急激に上にあがり、三半規管を刺激し、気分が悪くなり、吐いた。
と、言う事ができます。
しかしこれはあくまでも、「瞑眩」という現象を知らない方の論です。
この患者さんが治療後に気分が悪くなった原因を、「肯定的・積極的」にとらえるなら、「刺絡などの鍼刺激により、腹部の「水毒」が動き、身体にとって不要な水毒が排出された、現象」という事ができます。
鍼治療がうまくきまり、鍼刺激が患者さんの身体奥深くに作用すると、気分が悪くなったり、吐いたりします。
瞑眩です。
瞑眩は「吐く」のほか、「汗を大量にかく」とか、「下痢をする」、「大量の(または臭い・色の濃い)おしっこが出る」などがあります。