めまい(メニエル様のめまい)その1
-胃がんの摘出手術を受けた後、めまいと精神不安が出た症例-
患者
K・Hさん。女性、40代後半。
主な症状
主訴は「めまい」。
症状
「胃の3分の2を切除手術」・そのの2ヶ月後、めまいがおこりだす。
くるくる回ると言うよりも、「ふわふわと雲の上を歩いている」感じだと言う。
いつも頭が、ぼーと重だるく、胸焼けのような感じがいつもしている。
めまいにともない、頭痛、耳鳴り、肩こりがおこり、「足は電気が走ったように冷える」と言う(「電気の走るような痛み」と「冷え」が合体したような症状か?)。
とにかくキツイ冷えを感じる。
胃の切除手術の前後から生理がとびとびになる。
手術後、精神が不安定になる。
急に不安になって泣き出したり、何げない一言に激怒して、連れ合いをののしったりするようになる。
東洋医学的 四診
脈診 脈は全体に沈。やや弱く、力がない。
舌診 舌体はやや紫、舌苔は黄。
腹診 臍(へそ)から胸骨剣状突起にかけて手術痕。
下焦(下腹部)の「虚」と「寒」。
触診 その他とくに無し。
治療と経過
初診 某年 9月上旬
治療は「法」に従う。
治療中、足の三里(足の陽明胃経)に鍼をしたとき、「コメカミの方まで来ますね~」と、目をぱちくりぱちくりさせて驚いていた。
第二診 第1診から5日後
ふらつきと耳なりは、「少しまし」との事。
「頭痛と肩のコリが残る」との事。
治療は「第一診」に同じ。
週2回来るように指示する。
第三診 第2診から2日後
ふらつきと耳なりは、「少しまし」のまま変わらず。
頭痛は「かなり軽減した」とのこと。肩のコリは依然と残る。
治療は「第一診」に同じ。
第四診 第3診から5日後
治療は「第一診」に同じ。
第五診 第4診から2日後
治療は「第一診」に同じ。
第六診 第5診から5日後
ふらつきは完全になくなる。
耳なりと頭痛は「気にすれば気になる程度」に落ち着く。
肩のコリも、手術前の状態に戻る。
治療は「第一診」に同じ。
週1回のペースでしばらく通うように指示する。
第七診 第6診から7日後
ほぼ、手術前と同じ状態に戻ったので、手術前の、「肩こり」と「腰痛」、「足のしびれ(左大腿から下腿)」の治療に切り替える。
第八診 第7診から7日後
第八週以降、体調が良い日は、「めまいをほとんど感じずに、外出する日も増えた」と言うが、無理をして体調を崩したり、少しイライラする日が続くと、「めまいがきつくて起きられない日もある」とのこと。
「とりあえず、はりをした当日と翌日と翌々日のお昼ごろまでは楽になるので」と、週1回の治療をつづける。
感想
この患者さんは、2ヶ月前に、「胃の3分の2、切除手術」を受けています(胃癌)。
当院には、手術後、知り合いに方に勧められて来院されていましたが、手術後は体調も良く、以前から気になっていた、「腰痛」と「足のしびれ(左大腿から下腿)」の治療を受けていました。
2週間に1回くらいのペースで。
それが術後2ヶ月ごろより急に、上記のような「めまい」の症状が現れ、「腰も楽になったので、めまいも楽になるのではないか」と思い、来院されました。
近隣の内科では、「メニエル様めまい」と診断されたとの事。
この患者さんの「めまい」の原因は、一言で言うと「水毒」です。
水毒とは、「身体に悪い影響をあたえる水分の総称」です。
耳の中の内耳というところでは、小さな石が水の中に浮いていて、それがあっちに行ったり、こっちに行ったりすることによって、自分が今どこにいるのかという、「平衡感覚」をつかさどっています。
この患者さんが切除した「胃」は、東洋医学では「水」と深い関係のある臓器です。
また、東洋医学では、「がん」を「熱の塊」ととらえます。
がん化して熱の塊と化した「胃」の付近には、その熱を冷やそうと、「水」が集まってきていたことが予想されます。
それが急になくなった(切除された)ものだから、「水」が行き場所をなくし、上に登って、耳の中に入り込み、内耳を水浸しにして、平衡感覚を狂わしたものと考えられます。
もしかすると、ただ単純に、「更年期障害の症状の一つ」と考えた方が理解しやすいのかもしれませんが、耳の中に、何らかな理由で水が入り込み、平衡感覚をぐじゃぐじゃにした事はたしかです。
原因が熱の塊(がん)を切除したことによる水毒の上昇ととらえても良いですし、年齢的に見て更年期障害ととらえても良いと思いますが、原因はともかく、症状を現している「水毒の上昇」を取り除いてやらなくてはなりません。
治療は「法」に従います。
※ 参考 ※
『鍼道発秘講義』には、
『すべて耳聞こえざるは、腎気の不足、或は湿毒の生ずる故なり。風池、風府、肩を多く刺すべし。或は手足に強く引くに宜し。又、百会より血を漏らすに宜し。』
と、あります。
この場合、「腎気の不足」は関係ないので、「湿毒」、つまり「水毒」の病ととらえた方が良いでしょう。