腰痛。(灸のみで治った症例)腰痛の鍼灸治療


腰痛。灸のみで治った症例

患者

 K・R様。60歳代後半。女性。小柄でやや太り気味。元気でパワフル。

主な症状(主訴)

 腰痛。

症状(現病歴)

 若い頃から腰痛持ちで、「5年に1回程度、ぎっくり腰になる」という。
 60歳になり仕事を辞めてからは、ぎっくり腰になるケースも少なく、良い老後を過ごしていた。

 5日前に孫の子守りをして腰の張りを覚え、4日前に駅前にあるクイックマッサージ店(無免許店)にて「もんでもらったら、よけい痛くなった」と言う。そりゃそうだ。
 「自業自得やね♪」と私が言うと、「いじわる言わんといて~!」と笑っていた。

その他の持病など(既往歴)

 持病の腰痛は、L4-L5間の椎間板ヘルニア。
 30歳代の時から腰痛持ち。梅雨時や、冷えてくると腰が重だるくなる。

 【注意】今回の「腰痛」とは、痛む位置が違うので、直接的な関係は無いと思われる。しかし、間接的には関係はあるが…。

家族歴

 特筆すべき事項なし。

東洋医学的 四診(所見)

 脈診/やや浮・数。
 舌診/舌体、舌苔には特に異常は感じられない。
    舌下静脈の怒張が顕著。
 腹診/下焦(臍の下)の虚・寒が顕著。
 触診/足の冷えはあるものの「氷の様だ」というほどではない。氷水(こおりみず)程度。


東洋医学的な概念的理解(診断)

 脈診では、やや浮・数ということだが、「小柄でやや太り気味。元気でパワフル」という体質通りの脈をしている。
 「風邪気味」と言っていたので、その影響じゃっかん有るのかもしれない。今回の腰痛と直接関係はなさそうだ…。

 舌診では、舌体、舌苔には特に異常は感じられなかった。
 舌下静脈の怒張が顕著なのは「オ血」がある。
 ただ、下の腹診でも「オ血」による熱感を感じなかったので、今回の腰痛とは直接関係はなさそうだ。

 腹診では、下焦(臍の下)の虚・寒が顕著であった。これが今回の腰痛の直接的要因ではないか?
 ただ、足の冷えはあるものの「氷の様だ」というほどではなく、「氷水」程度。

西洋医学的な理解

 省略。

治療と経過

初診

 初診は某年一月中旬。
 基本的な治療計画は、下焦(下腹部)の虚・寒を補い・温め、元気にする事で腰痛が改善されるであろうことを期待する。

 もともとあまり鍼が好きではない患者さんだったので、今回は灸治療のみで治療をこころみる。
 治療点は、
  ①下焦の虚・寒。
  ②今回の腰痛の痛みの中心が、仙骨付近であったので、仙骨を中心に「力が無く、へこんでいるところ」を選んで施灸。
  ③また足も、「力が無く、へこんでいるところ」を選んで施灸。太谿穴付近に、反応のあるツボが多くみられた。

治療直後(感想等)

 治療直後は、「温かくて気持ちが良かった」という程度の感想。

第二診

 初診の一週間後に来院。
 「前回の治療で、ずいぶん楽になりました」とのこと。
 治療計画は「第一診」に同じ。

第三診

 第二診の一週間後に来院。
 腰痛の位置が、仙骨部から右上臀部に移動する。
 治療計画は「第一診」に同じ。

第四診

 第三診の一週間後に来院。
 治療計画は「第一診」に同じ。

第五診

 第四診の一週間後に来院。
 治療計画は「第一診」に同じ。

 この後、だいたい週一回のペースで来院。約半年ほど主に灸(たまに鍼)の治療を続け、かなり症状が楽になった頃から来院しなくなったので、一応、「治癒」としてカルテを閉じた。

感想(考察)

 この患者さんは、あまり鍼が好きではないという事と、今回の腰痛の原因の多くが、「冷え」から来ているようだったので、お灸のみで治療しました。
 「腰痛」、とくに「ぎっくり腰」と聞くと、普通は腰の奥の方に原因があり、熱を持っている場合が多いので、「鍼を深く、刺激もやや強めに…」と、思ってしまいがちですが、そうではない場合もあるという事を言いたかったので、この症例を紹介しました。

 この患者さんは、よくしゃべり、良く笑う、小柄だけどパワフルな方で、下腹部を中心に「オ血」とよばれる古血(ふるち/古い血)を確認できますが、今回の腰痛はそれが暴れて起こっているわけではなく、逆に、何らかの原因で体力が落ち、冷えて、腰痛を起こしたものと思われます。

 こんな状態の時に、無免許のマッサージ店に行き、力任せのゴリゴリマッサージを受けたのでは、痛くなって当然です。
 優しく温め、丁寧に冷えを取る必要があります。

 冷えを取るのに、お灸は最適です。


腹部の冷えと腰痛の関係。
 
 腹部の冷えと腰痛の関係性については、経験上、良く知られています。
 人間も含め、骨のある動物は、骨によって身体を支え、重要な臓器は骨によって守られています。
 しかし、あまりにもガチガチに骨で固めてしまうと、身動きがとれませんので、必要に応じて骨をはぶいています。

 腰の解剖図を頭に浮かべてもらいたいのですが、腰は腰の骨(腰椎)によって支えられています。しかし腰椎は、1本のガッチリした骨ではなく、小さな骨が一列にならんでいて、その骨と骨の間には椎間板とよばれるクッションがあり、じん帯や筋肉によって支えられています。
 腰は動きを良くするために骨が少ない分、骨が少ないので椎間板、じん帯、筋肉に非常に大きな負担をかけています。

 また腰は、腰部(背部)の筋肉によってのみ、支えられているわけではありません。腹部の筋肉も腰を支えています。
 腹部の臓器(内臓)が何らかの機能低下におちいり、適度な熱量を生産できなくなってくると、腹部の筋肉自体が冷えて、機能低下を起こします。
 機能低下を起こすと、パワーが出ませんので、その分の負担が腰部の筋肉にかかってしまいます。

 腰は、腹部の筋肉で3割、側腹部の筋肉が1・5割づつの3割、腰部の筋肉が4割の、合計10割でささえています。
 機能低下を起こしたからと言って、ゼロ割になるわけではありませんが、バランスが崩れ、4割の腰の筋肉に相当な負担がかかります。

 腰の痛みは、腰のみによって起こるのではありません。

 長引く腰痛、何度も繰り返す腰痛には、鍼や灸、そして国家資格を持ったあん摩マッサージ指圧師の施術を受けられてみてはいかがでしょうか?