慢性関節リウマチ(「リウマチ」と診断されない、「リウマチ患者」の症例)
患者
R・Nさん。70代前半。女性。
主な症状(主訴)
右手第4指(薬指)の痛みと手首の腫れと痛み。
症状(現病歴)
右手の第4指(薬指)の痛みが主訴。
痛みが顕著だが腫れも気になる。
手首の腫れと痛みも有り、右腕全体がしびれたように感じる。
「とくに朝方がつらい」という事なので、リウマチが疑われるが、「血液検査でリウマチ因子が出ないので、リウマチではない」と医師には言われる。
どう見てもリウマチの患者さんなのだが・・・。。
東洋医学的 四診(所見)
脈診/沈んでいる。
舌診/舌体は、細くて色が悪い(紫赤)。
舌苔は、灰色がかった黄色。
腹診/下の図を参照。
全体に冷えている。
とくに、心下、下焦、右下腹部の手術痕部が「寒」。
下焦は力なく、皮膚がぽちゃぽちゃ水をはらんでいる感じ。
左の上腹部からヘソの横にかけて、スジバリあり。
触診/右手第4指(薬指)と両手首に「熱感」あり。
東洋医学的な概念的理解(診断)
脈診、舌診ともに、病が深いところに存在していることを示している。
腹診では、図のごとく「寒」が強い。
「寒」が強いので、どこかに「熱」が無いとバランスが取れない。
この「熱」が、「右手第4指の痛みと手首の腫れと痛み」にほかならない。
西洋医学的な理解(リウマチの診断基準)
リウマチの診断基準は以下の通りです。
1 朝のこわばり
2 3領域以上の関節炎
3 手の関節炎
4 対称性関節炎
5 皮下結節
6 リウマトイド因子陽性
7 X線上の変化
<以上の7項目中4項目を満たす。>
R・Nさんの場合、上の7項目のうち、1番、3番の要件は満たしていますが、関節炎は2領域、非対称性で、皮下結節もない。
血液検査をしてもリウマトイド因子は陰性で、レントゲンの像も正常。
ということで医師からは、「リウマチ」という診断は下されませんでした。
しかし、朝の起きぬけの症状はまさにリウマチ。
この患者さんの場合、何という診断名になって医師が保険請求したのかを聞くのを忘れましたが、おそらく、「関節炎」という様な病名で請求しているのでしょう。
まっ、名前なんてどうでも良いですが。患者さんにとっては、痛みが取れるか取れんか、病状が進行するのか進行しないのかが問題で、病名なんてどうでも良いといえば、どうでもいい。
治療と経過
初診(某年4月16日)
治療は「法」に従う。
この患者さんは、指、手首の「腫れ・痛み」がきつい。ハレイタミは性質は、ずばり「熱」。
つまり、上半身(ヘソから上)に熱気が集中し、下半身に寒気が集中している状態(下図参照)なので、治療の基本は、上の「熱」を瀉し、下の「寒」を補う事となる。
①とくに腹部の寒がよく温まるように気をつけて施術。
②上(上半身)はヘタに触ると「暴れだす」心配もあるので、さらっと流す程度に施術。
下半身の要穴を選び、重点的に施術する。
※ 鍼治療のあと、体内の毒が動くことによって、腕に邪気が行き施術前より痛むことも有るので、それを予防する意味も含めて、肩、背中、腕、手首、指先等を散じておくこと。
治療直後(感想等)
治療直後、「腕のしびれがだいぶんましです」と言う。
治療中、まったく腕に触っていないのに、腕のしびれがましになる・・・。
不思議ですね~。
第二診(4月23日)
上腕部をよく触ってみると、手の少陰心経、手の厥陰心包経のラインに沿って、冷たいラインがあることにきづく。
よって、手の少陰心経および手の厥陰心包経の要穴を補。その裏の少陽三焦経、手の太陽小腸経の要穴を選び、瀉。
後は「第一診」に同じ。
第三診(4月30日) 治療は「第一診」に同じ。
第四診(5月7日) 治療は「第一診」に同じ。
第五診(5月14日)
灸治療を加える。ツボは大椎(だいつい)。直接灸を五壮から始める。
治療は「第一診」に同じ。
第六診(5月21日) 治療は「第一診」に同じ。
第七診(5月28日) 治療は「第一診」に同じ。
第八診(6月4日)
腹部・心下の「寒」の部分がましになってくる。
第九診(6月11日) 治療は「第一診」に同じ。
第十診(6月18日) 治療は「第一診」に同じ。
第十一診(6月25日) 治療は「第一診」に同じ。
第十二診(7月9日) 治療は「第一診」に同じ。
第十三診(7月30日)
「冷房で冷えたのか、肩がこって、手首が痛い」とのこと。
おそらく治療が2週間飛んだからではないか…。
もちろん、「冷房」のせいもあると思うが。
第十四診(8月6日)
「今日は足首(左足関節)も痛い」とのこと。
舌を見ると、灰色より黒く、ややみどりがかった色をしている。腹部の寒も復活。
第十五診(8月9日)
症状が悪いので、週一回の治療間隔を詰めてきてもらった。
第十六診(8月16日)
足首の腫れがましになる。痛みもほぼ消える。
第十七診(8月23日)
第十八診(9月6日)
第二十一診
(10月11日)
今度は、右の足関節が痛み出してきた。
第十八診(9月6日)あたりから右のひざの「違和感」が出はじめ、第二十一診時には、右足関節の痛みに変わる。
おもしろいことに、右下腹部の手術痕部の「寒」がきつくなる。相関性があるのですね~。
この後も、だいたい週一回のペースで治療。約二年ほど鍼と灸の治療を続け、かなり症状が楽になった頃から来院しなくなったので、一応、「治癒」としてカルテを閉じた。
感想(考察)
※ 医師からは、リウマチの診断をいただいていませんが、症状がリウマチですので、病名をリウマチで表記しますが、正しくは、「リウマチ様の指の関節の痛み」です。
この患者さんは、良くなったり悪くなったりを繰り返していましたが、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年という長いスタンスで見ていった場合、全体的に良い方向で「治癒」に向かっていった症例です。
だいたいのリウマチ患者さんがそうですが、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
しかし、鍼灸治療を続けていると、必ず良い方向に向かいます。
時間はかかりますが・・・。
リウマチの患者さんは、鍼もよく効きますが、灸も良く効きます。
自宅灸などしていただくと、より効果が有りますので、おすすめします。
灸点は鍼灸師につけてもらって下さい。
この患者さんの場合興味深いのは、右の腕から始まり、左の足関節、右のひざ、右の足関節へと痛みがぐるぐる回っていきました。
これはリウマチ患者さんに多く見られる症状です。
まるで、「痛みの主(ぬし)」が、「どこに居ついてやろうかな~」と、物色しているようです。
この時適切な治療をしてやると「痛みの主」も留まる場所がなくなり、「そうですか、それではおいとまいたします」と、どこかに逃げて行ってくれます。
このぐるぐる痛む箇所が移動することひとつ見ても、痛みの原因が痛んでいる箇所にあるのではなく、どこか根本的な原因が有るということがお分かりいただけるでしょう。
そう、原因は腹にあります。
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